超加工食品と妊活:分かっているのは主に男性側です
超加工食品を控えた方がよい、という話は妊活の文脈でもよく聞きます。ただ、実際にどこまで調べられているのかを確かめると、分かっていることは思ったより偏っています。
先に結論を書きます。超加工食品と妊活の関係で人のデータがあるのは、主に男性の精液所見についてです。女性の妊娠しやすさへの直接の影響は、まだほとんど調べられていません。
超加工食品とは
食品を加工の程度で4段階に分けるNOVA分類で、いちばん加工度が高い群を指します。糖分・脂質・塩分が多く、添加物、人工の着色料や香料が加えられたもので、スナック菓子、清涼飲料水、インスタント食品、加工肉などが含まれます。
必要な栄養素が乏しい一方でエネルギーが高い、という点が共通しています。
男性で報告されていること
生殖医療センターを自ら受診した男性358名(平均34.6歳)を対象とした2025年の横断研究があります。食事の内容をNOVA分類と地中海食の遵守度で評価し、WHO 2021年基準で精液検査を行ったものです(PMID: 40647172)。
報告されたのは次の点です。
- 超加工食品の摂取が多いほど、精液所見が悪いという相関があった
- この関係は年齢とBMIとは独立していた
- 一方、ホルモン値(FSH、LH、テストステロンなど)とは関連が見られなかった
- FSHが8 IU/mL未満の男性では、超加工食品の摂取が多い層ほど、精子の生存率と正常形態の指標が低かった
同じ研究グループによる前身の研究(300名)でも、地中海食の遵守度が高いほど精子濃度・運動率・生存率・正常形態が良いという相関が報告されています(PMID: 38068847)。
ただし、これは「相関」です
どちらも横断研究です。ある時点で食事と精液所見を同時に測り、両者の関係を見たもので、食事を変えたら精液所見が良くなったことを示したものではありません。
食事の内容は自己申告の質問票で評価されています。また対象は生殖医療センターを自ら受診した男性で、一般の集団ではありません。
食生活が乱れがちな人は、睡眠や運動、飲酒・喫煙の習慣も違うことが多く、そうした要因の影響を完全には切り離せません。
女性で分かっていないこと
意外かもしれませんが、超加工食品の摂取と女性の妊娠しやすさ(妊娠までの期間や妊娠率)を直接調べた質の高い研究は、ほとんど見当たりません。
関連しそうな報告として、PCOSのある方で食物依存の傾向が強いという調査はありますが、オンラインで集めた自己申告の調査であり、臨床のデータではありません。ここから「超加工食品がPCOSを悪化させる」とも「妊娠しにくくなる」とも言えません。
つまり女性側については、**「悪い影響がない」ことが分かっているのではなく、「まだ調べられていない」**という状態です。
機序の説明は、どれも仮説です
超加工食品が生殖機能に影響しうる理由として、インスリン抵抗性、慢性的な炎症、酸化ストレス、微量栄養素の不足、腸内環境の変化などが挙げられます。
これらはいずれももっともらしい筋道ですが、超加工食品を減らすことでこれらが改善し、その結果として妊娠しやすくなった、という一連の流れを人で確かめた研究はありません。機序の説明が詳しいほど確からしく感じられますが、確からしさとは別の話です。
現実的な付き合い方
上のとおり、超加工食品を減らせば妊娠しやすくなる、とは言えません。 それでも、全身の健康という観点では控えめにする理由があります。無理のない範囲で構いません。
- 完全にやめる必要はありません。 頻度と量を減らすだけで十分です
- 置き換えで考える。 減らすことより、何を足すかの方が続きます。野菜、果物、全粒穀物、魚、豆類、ナッツを増やすと、結果として超加工食品の割合が下がります
- 飲み物から見直す。 清涼飲料水は量の割に意識されにくく、減らしやすい部分です
- 自分を責める材料にしない。 食生活が妊娠の成否を決めるという根拠はありません
男性側の食事については男性妊活と食事でも扱っています。
よくある質問 (FAQ)
Q1: 超加工食品をやめれば妊娠しやすくなりますか?
A1: そうとは言えません。男性では摂取量と精液所見の相関が報告されていますが、横断研究であり、減らせば改善するかは確かめられていません。女性については直接調べた研究がほとんどありません。
Q2: 超加工食品は男性の生殖機能に影響しますか?
A2: 358名を調べた横断研究で、摂取が多いほど精液所見が悪いという相関が報告されています。年齢とBMIとは独立した関係でしたが、因果は示されていません。
Q3: 妊活中に特に避けるべき超加工食品はありますか?
A3: 特定の食品を名指しできるだけのデータはありません。全体として頻度を減らす方が現実的です。
Q4: 完全にやめられません。妊活は難しいでしょうか?
A4: そんなことはありません。食生活だけで妊娠の可否が決まるわけではなく、完全にやめる必要を示すデータもありません。
まとめ
超加工食品と妊活について人のデータがあるのは、主に男性の精液所見です。358名の横断研究で摂取量と精液所見の悪さの相関が報告されていますが、相関であって因果ではありません。
女性側については、直接調べた質の高い研究がほとんどなく、「影響がない」のではなく「分かっていない」段階です。
超加工食品を控えることは全身の健康という観点で意味がありますが、妊娠しやすくなる手段として位置づけるだけの根拠はまだありません。 妊活のためというより、体調のため、くらいの距離感が実態に合っています。
参考文献
- Role of Mediterranean Diet and Ultra-Processed Foods on Sperm Parameters: Data from a Cross-Sectional Study. Nutrients. 2025. PMID: 40647172(358名の横断研究です。因果は示していません)
- Observational Cross-Sectional Study on Mediterranean Diet and Sperm Parameters. Nutrients. 2023. PMID: 38068847(同じ研究グループによる300名の横断研究です)
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