書籍の全体像
生殖医療専門医が、最低限これだけは知っておいてほしいと考える医学的事実を24項目に絞ったものです。目次を隠さず全て公開しています。ここにある知識は生理学と疫学に基づくため、制度や価格と違って年月が経っても変わりません。
この知識は、あなた自身のためだけのものではありません
本書が想定する読者には、当事者だけでなく「中高生・大学生のお子さんがいるご両親」「教育や医療に従事している人」「健康経営に関心がある人」が含まれています。事実23と事実24が扱うのは、当事者ではなく周囲の人の理解の問題です。誰か一人が正しく知っていることで、救われる人がいます。
妊娠には2つのタイムリミット(卵子の質と数)があり、それがライフプランの前提になります。
10人に1人は「不妊症」になる
1年間避妊せずに妊娠しない状態を不妊症と呼びます。その状態のまま自然に任せても、妊娠率は回復しません。
卵子の質は30代から低下する
1つ目のタイムリミット。33歳以降で妊娠率は徐々に下がり、36歳を超えると低下幅が大きくなります。
100人に1人は30代のうちに子どもを授かるのが困難になる
早発卵巣不全は40歳未満の100人に1人、30歳未満の1000人に1人。平均初婚年齢の直後に起こりうることです。
卵子の数は音もなく減っていく
2つ目のタイムリミット。自覚症状がないままAMHは下がります。数は年齢と相関せず、個人差が極めて大きいのが要点です。
時間は限られている
キャリア形成期(20〜35歳)と妊娠適齢期が重なります。適齢期は人によって違うため、まず自分の状態を知る必要があります。
月経・性感染症・避妊。無症状のまま進み、将来の妊娠する力を削る問題を早期に捕まえます。
自分の月経について深く理解することが第一歩
周期・痛み・量の変化は最も早く手に入るサインです。周期が短くなる、伸びるという変化には意味があります。
無排卵が続くと子宮体がんのリスクが増加する
排卵がないと子宮内膜がリセットされず増殖し続けます。月経不順の放置には、妊娠以外のリスクもあります。
ひどい月経痛=子宮内膜症と考えておく
痛みは他人と比べられません。子宮内膜症は年単位で悪化し不妊の原因になりますが、有効な治療があります。
性病に感染していても気づかない
クラミジアは20代前半の10〜20人に1人。無症状のまま卵管を閉塞させます。検査は簡単で治療も容易です。
HPVが子宮頸がんを引き起こす
生涯で50〜80%が感染し、90%は2年以内に自然治癒します。ワクチンと1〜2年ごとの検診でほぼ防げます。
望まない妊娠率は高い
避妊のない性交では1ヶ月21%、6ヶ月73%が妊娠します。20代は人生で最も妊娠しやすい時期です。
低用量ピルは避妊、月経痛、月経不順にも有効
避妊だけの薬ではありません。周期を整え、月経困難症の悪化を防ぐことは、将来の妊活の準備でもあります。
妊娠しやすい時期の正しい捉え方と、自然に任せてよい期間の見極め方です。
排卵した卵子は24時間以内に妊娠する力を失う
精子は約1週間生存します。つまり最も妊娠しやすいのは排卵2日前から当日までです。
月経が順調であれば、排卵日が正確に予測できる
排卵の約2週間後に月経が来ます。次の月経予定日から逆算すれば、自分で排卵日を予測できます。
基礎体温は妊娠しやすい日の予測には役に立たない
体温が上がった時点で排卵は終わっています。基礎体温は「排卵があったか」の事後確認の道具です。
月経不順の人は、排卵日をアプリで予測できない
アプリは過去の周期から計算しているだけです。周期が不安定なら原理的に当たりません。通院が近道です。
妊活開始直後は妊娠しやすい
3ヶ月で50%、6ヶ月で80%。ただし6→12ヶ月では10ポイントしか増えません。6ヶ月が方針転換の分岐点です。
早期に不妊予防の検査を行うことで選択肢が広がる
妊娠しづらい状態が事前に分かれば、治してから始められます。時間を失わないことが最大の利益です。
治療の全体像と、通院という日常への影響。始める前に知っておくと消耗が減ります。
不妊治療は3種類ある
自分の排卵を使う治療(タイミング療法・人工授精)と、排卵させない治療(体外受精)に分かれます。
検査は全て問題なし。でも、妊娠しない
検査で分かるのは卵管と精子まで。受精・胚発育・着床は体の中で起きるため確認できません。
採卵した年齢の妊娠率が将来的に保たれる
凍結した卵子・受精卵は加齢の影響を受けません。第2子・第3子の治療にも使えます。
不妊治療とはスケジュール管理である
通院は月経周期に従属します。採卵周期は2週間で3〜5回、日程は数日前まで確定しません。
通院の負担は誰にも分からない
「話しても伝わらないから話さない→会社は困っている人がいないと認識する」というループが職場にあります。
ジェンダーロールという先入観が存在する
妊娠・出産・授乳は女性にしかできませんが、家事と育児はどちらでもできます。その線引きが負担を決めます。
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